海域アジア・オセアニア研究
Maritime Asian and Pacific Studies
東京都立大学拠点

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拠点の目的

海域アジア・オセアニア研究について

海域アジア・オセアニア研究は、人間文化研究機構「グローバル地域研究」プログラムの一環として始まった研究プロジェクトの一つである。海域アジア・オセアニアは、東アジア、東南アジア、オセアニアといったエリアを包括するが、明確な境界はない。本研究は、日本の南西諸島、台湾、中国南部沿岸部、東南アジア島嶼部、オセアニア島嶼部を中核エリアとし、そこからグローバルに拡がる現象を、特に人類学を中心とする視点から捉えることを目指す。

東アジア、東南アジア、オセアニアの研究は、これまで個別の学会が組織・運営されてきたことに象徴されるように、異なる地域研究の体系のなかで発展してきた。一部の先駆的な研究を除き、これらの地域研究の間では十分な対話がなされない傾向が今でも強い。だが、海洋という視点から捉えると、東アジア、東南アジア、オセアニア、さらにはその外延の世界は、個々ばらばらに理解することはできない。つまり、東アジア、東南アジア、オセアニアなどという枠組みは、陸地に住む人間から見た、陸地主観的な区分に過ぎない。海域アジア・オセアニア研究は、このような既存の地域、そして地域研究の枠組みを取り払い、それらを超えた人・モノ・情報などのネットワークを捉えることを目的としている。

東京都立大学拠点の活動について

海域アジア・オセアニア研究全体としては、さまざまな個別研究、共同研究に取り組むことになるが、当東京都立大学拠点が特に注目するのが、現在社会における地域を跨いだ人と物質の流動である。たとえば、オセアニアの島嶼部では、オーストロネシア語族系の先住民だけでなく、現在の中国、フィリピン、インドネシアにあたる地域から移住した人々が暮らしてきた。今や中国や東南アジアからの食や道具もオセアニアの島嶼部で流通し、先住民の生活に溶け込んでいる。その傾向は近年ますます強まっており、オセアニア島嶼部は、アジアの経済ネットワークの一部としての性質も帯びるようになっている。このような東アジア、東南アジア社会のオセアニアへの拡がりは、本研究の焦点の1つである。

それ以外にも、オセアニアの先住民の東アジア・東南アジアへの移住、東南アジア山地民と海域世界とのつながり、沖縄のグローバル・ネットワーク、客家系華僑の海をまたいだネットワーク(オンライン・コミュニティを含む)なども研究の対象とする予定である。最終的には、それらの研究成果を統合することで、現代海域アジア・オセアニア世界の諸相を明らかにする。