2024年6月22日(土)講演会を開催しました:「海域アジア・オセアニアにおける現代的な人の移動と多様な歓待実践」
2024.6.24
お知らせ日本語研究活動
海域アジア・オセアニア研究プロジェクト東京都立大学拠点では、2024年6月22日(土)に、科研費基盤(B)「現代アジア・オセアニアにおける他者への想像力と歓待の実践知に関する人類学的研究」(研究代表者:河野正治)との共催で講演会を開催いたしました。
このイベントは筑波大学東京キャンパスで実施され、計21名が参加しました。
当日プログラム:
14:00 – 14:25 趣旨説明:河野正治(東京都立大学)
「趣旨説明に代えて:海域アジア・オセアニア研究と人類学的な歓待研究の意義」
14:30 – 15:20 口頭発表①:片岡真輝(東京外国語大学)
「インド系フィジー人の太平洋アイデンティティと先住民系フィジー人の受容」
15:20 – 15:50 質疑応答
16:00 – 16:50 口頭発表②:田川夢乃(東洋大学)
「誘惑のパフォーマンス:フィリピンの日本人向けカラオケパブにおける接客者―顧客関係」
16:50 – 17:20 質疑応答
17:20 閉会
当日の講演会の様子(撮影者:李婧)
河野による趣旨説明では、人間の移動の自由を考えるうえで、移動する側のみならず、それを受け入れる側に注目する必要性が述べられました。
そのうえで、新型コロナ禍による移動の制限を経て、徐々に人の移動が再開されつつある今日において、人の移動がいかなる歓待実践によって可能または不可能になるのかを各々の現場の現代的な脈絡で検討することにこそ、海域アジア・オセアニア地域における歓待研究の意義があると論じました。
それに続いて、同地域における多様な歓待実践の事例研究という位置づけで、片岡氏と田川氏のそれぞれによる口頭発表がなされました。
片岡氏は、多民族社会として知られるフィジーにおいて、インド系フィジー人が「訪問客」と呼ばれることに注目し、インド系フィジー人がいかに受け入れられているのかという問題を取り上げました。
片岡氏は、サトウキビ・プランテーションのための労働移住という過去の出来事のみならず、パシフィック・アイデンティティの勃興という現代的な脈絡も踏まえて、この問題を考察しました。
田川氏は、商業化された歓待の事例として、フィリピンのカラオケパブにおいて従業員が日本人客をいかにもてなしているのかという点に着目した発表をおこないました。
田川氏は、接客現場での参与観察にもとづく詳細なデータをもとに、接客者のフィリピン人女性と顧客の日本人男性のあいだのやり取りの様子を克明に記述し、そうしたコミュニケーションの様相を「誘惑」という概念から考察しました。
終了後には茗荷谷駅周辺の中華料理屋で懇親会を実施しました。
若手研究者を中心に、それぞれの専門や地域を超えた交流がなされ、盛会のうちに解散となりました。
(文責:河野正治)