海域アジア・オセアニア研究
Maritime Asian and Pacific Studies
東京都立大学拠点

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2023年11月18日(土)講演会を開催しました:「モノを通した「ダブル・ビジョン」の歴史人類学-慶應大所蔵のニューギニア民族資料を中心に-」山口徹(慶應義塾大学)

2023年11月18日(土)講演会を開催しました:「モノを通した「ダブル・ビジョン」の歴史人類学-慶應大所蔵のニューギニア民族資料を中心に-」山口徹(慶應義塾大学)

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2023.11.20

お知らせ日本語研究活動


海域アジア・オセアニア研究プロジェクト東京都立大学では研究活動の一環として、以下の日程で山口徹氏(慶應義塾大学)を招いて講演会を開催いたしました。

 

日時:【講演会】2023年11月18日(土)13:00-15:00、【収蔵庫観覧】15:00-17:00
会場:慶應義塾大学三田キャンパス


講演タイトル:モノを通した「ダブル・ビジョン」の歴史人類学-慶應大所蔵のニューギニア民族資料を中心に-


講演要旨:
 美術史家のバーナード・スミス(Bernard Smiith)は1960年代に、18世紀後半から19世紀前半の絵画資料と航海日誌等の文書資料にもとづき、南太平洋に向けられた西洋の眼差しを丹念に読み解いた。その一連の研究に触発され、同様の史資料を活用しながら、西洋の眼差しと現地の人々の眼差しの交差を「ダブル・ビジョン」として論じたのが、ニコラス・トーマス(Nicholas Thomas)をはじめとするオセアニア史や美術史の専門家たちである。その視座は、独領ニューギニアにおける民族資料の収集の現場を焦点化する歴史家ライナー・ボウシュマン(Rainer Buschmann)に引き継がれている。とはいえ、民族資料そのものの物質文化研究には、いまだ開拓の余地が残っている。19世紀末から20世紀前半に現地の人々が製作し、植民地的状況下の交渉を通して現地行政官や貿易商人らが入手し、そして本国の博物館が収蔵することになった造形物であることを踏まえると、西洋の画家が描いた南太平洋の絵画と同じように、いやむしろそれ以上に、西洋側と現地側の眼差しの交差がそこに宿っているとしても不思議ではない。
 奇しくも慶應義塾大学には、主に小嶺磯吉や松江春次に由来するニューギニアの民族資料が2千点近く所蔵されている。小嶺は、20世紀前半に独領ニューギニアで活動していた貿易商である。松江は、戦前・戦中に南洋群島の製糖業を中心に多角的な事業を展開した南洋興発株式会社の社長で、1930年代には蘭領ニューギニアにも事業を拡大している。本講演では慶應大所蔵のニューギニア民族資料を紹介しながら、その形状や素材にダブル・ビジョンを探る方法について考えてみたい。