2023年10月27日(金)講演会を開催しました:「琉球・沖縄における孔子廟・釈奠の歴史と現在――東シナ海に浮かぶ「境界」という視点から」石垣 直(沖縄国際大学)
2023.10.29
お知らせ日本語研究活動
海域アジア・オセアニア研究プロジェクト東京都立大学では研究活動の一環として、以下の日程で石垣直氏(沖縄国際大学)を招いて講演会を開催いたしました。
講演会はWeb会議システムを用いて行いました。
日時:2023年10月27日(金) 17:00- 19:00
完全オンライン(Web会議システム)にて実施
講演タイトル:琉球・沖縄における孔子廟・釈奠の歴史と現在――東シナ海に浮かぶ「境界」という視点から
講演要旨:
日本列島の南西に位置する島々には、150年程前まで、「琉球」という王国が数百年にわたって存在していた。この王国は、日本/中国から多くの影響を受けながら、独自の文化を形成した。本発表が主題とする琉球・沖縄の孔子廟およびそこで挙行される釈奠(孔子祭祀)も、琉球を代表する歴史・文化的な要素の一つである。
琉球における釈奠の実施および孔子廟の建設は、近世初期にまで遡る。しかし、個別地域(シマ・ムラ)の習俗やその地域差、そして日本の民俗文化との比較に関心を払うことの多かった沖縄民俗研究においては、孔子廟および釈奠という主題は十分に調査・検討されてこなかった。本発表では、関連する資料・先行研究をもとに、琉球における釈奠の受容や孔子廟の建設を通じた国家的祭礼化およびその後の展開を整理する。本発表ではさらに、近代に入り「沖縄県」となったこの地域で、孔子廟および釈奠がどのように扱われ、沖縄戦の戦禍の後、如何にして再建と復興を果たしたのかを、明らかにする。
本発表が具体的な対象とするのは、中国東南部にルーツをもち、琉球国の外交を支えた久米村の人々による孔子廟(久米至聖廟)建設ならびに釈奠である。久米至聖廟の歴史や釈奠については、久米村の末裔らが結成した久米崇聖会の刊行物その他で紹介されてきた。また近世琉球における孔子廟や学校の建設については歴史学者らによる研究もある。本発表では、これらの資料や論考ならびに発表者自身の調査成果を踏まえ、琉球・沖縄における孔子廟と釈奠を、東シナ海を舞台とした「境界の歴史・文化」の一端として捉え直すことを試みる。孔子廟・釈奠を主題としたこうした再考の試みからは、琉球が歴史的に境界であったこと、そして近代以降の沖縄もまた依然として境界であり続けていることが明らかになる。