海域アジア・オセアニア研究
Maritime Asian and Pacific Studies
東京都立大学拠点

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2023年12月10日(日)講演会を開催しました:「「移民を受け入れる側」としてのトンガ王国:中国からの移民を事例として」北原卓也(早稲田大学)

2023年12月10日(日)講演会を開催しました:「「移民を受け入れる側」としてのトンガ王国:中国からの移民を事例として」北原卓也(早稲田大学)

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2023.12.11

お知らせ日本語研究活動


海域アジア・オセアニア研究プロジェクト東京都立大学では研究活動の一環として以下の日程で講演会を開催いたしました。

 

日時:2023年12月10日(日)16:00-18:00
会場:早稲田大学早稲田キャンパス11号館708教室

講演者:北原卓也(早稲田大学)

講演タイトル: 「移民を受け入れる側」としてのトンガ王国:中国からの移民を事例として

講演要旨:
 南太平洋の島嶼国であるトンガ王国は、周辺のポリネシア各国と同様に移民を多く送り出している。教育や職を求めてトンガを出て生活する移民の数は本国の人口を大きく上回り、移民からの送金は国内経済にとって欠かすことのできない財源となっている。こうした社会的な特徴からトンガは移民を送り出す側として注目されることが多い一方、「移民を受け入れる側」としての一面も持っている。本発表では、特に最近増加傾向にある中国からの移民に焦点を当て、トンガがどのような体制で中国系移民を受け入れているか、また中国系移民がどのような生活を送っているかについてその一端を報告する。
 トンガにおける移民は、ヨーロッパ系、太平洋島嶼系、アジア系に大別することができる。中でも1998年に台湾から中国に外交関係をスイッチして以降、中国からの移民が増加傾向にあり、その数は他の地域からの移民を圧倒している。中国からの移民は職を求めてやってきており、かつてはレストラン経営や雑貨店経営が主流であったが、中国政府によるインフラ整備などの大規模なプロジェクトに伴って移住してきた中国人労働者といった短期間の移民や中国からの観光客をターゲットとした旅行代理店など多様な事業を展開する者もいる。トンガ政府はトンガ人の事業を守るために外国人に対する法的な規制を設けているが、それを回避するために中国系移民の中にはトンガ国籍を取得する者もいる。中国系移民たちの熱心な仕事ぶりはトンガ社会にとって利便性を享受できるものの、脅威にも映っており、それは中国系移民に対する負のイメージにもつながっている。中国系移民たちは未だに差別的な言動に晒されることも少なくないが、婚姻関係や子どもの学校などを通じて、かつてはほとんどみられなかった地域社会との交流をもつ者も現れており、トンガ社会と中国系移民の関係性は変化してきている。